エビデンスベースの教育、未来のリーダー育成
調査研究活動
JADAは、スポーツのインテグリティが護られ、フェアでクリーンスポーツを実現するために、様々な競技レベルや年齢層のアスリート、スポーツ関係者、一般の方々を対象に、スポーツや社会における「フェアネス」や「アンチ・ドーピング/ドーピング」に対する意識や行動様式に関して調査研究を行っています。
これらの調査研究から得られた結果に基づき、アンチ・ドーピングのルールの情報伝達のみならず、スポーツの価値を基盤とする教育教材の開発・制作、それらの実践、検証・分析を行い、エビデンスに基づいたアンチ・ドーピング活動、スポーツの価値・チカラを発信する活動等を実践しています。
*JADA実施の調査研究は、文部科学省/スポーツ庁委託事業として行っています。
RESARCH
01
エビデンスベースの教育:研究 x 実践
行動変容「フェーズ」~社会・未来にスポーツの価値をつなげる
日本国内におけるクリーンスポーツ教育プログラムは、スポーツのみならず、社会においても「スポーツの価値を通して、より良い社会、未来を創る」役割を担う人材が育つことを目的として、「世界アンチ・ドーピング規程」「教育に関する国際基準(ISE)」および「ISEガイドライン」に準拠し、調査研究のエビデンスに基づいたプログラムとして構築しています。
プログラム内では、「スポーツの価値を未来につなげる」をキーワードとして、教育を受ける対象者(学習者)のスポーツや社会との関係性を、7つの段階(フェーズ)に分け、各フェーズでのクリーンスポーツアクションの目標を設定することによって、各教育アクティビティの目標設定、教育アクティビティを通しての考え方や行動変容の評価の明確化、経時的に行動変容を確認することで教育目標の達成度を把握することができます。「スポーツや社会との関係性」を通して、クリーンスポーツアクションの目標設定を行う方法は、これまでの調査研究の結果に基づき日本オリジナルのものとして実施しています。
また、日本で推進してきたスポーツの価値、クリーンスポーツに関する教育における教材や指導案は翻訳され、「リアルチャンピオン教育パッケージ」(JADA開発)として世界のアンチ・ドーピング機関や競技団体、学校などで活用されています。アスリートだけでなく、「スポーツの価値を通して、より良い社会、未来を創る」人材のグローバルな育成に日本が寄与をしています。
★「リアルチャンピオン教育パッケージ」(英語)
https://playtrue2020-sp4t.jp/edu_package/
RESARCH
02
スポーツの価値とアンチ・ドーピングの考え方
JADAは、クリーンスポーツ環境に参加する権利を持つアスリートやサポートスタッフなど、幅広い対象層への調査を実施し、スポーツの価値の教育を推進するための調査研究を行っています。
★各年の調査研究の要旨は、一部以下よりダウンロード可(英語版のみ)
調査研究のより詳しい内容に関するお問い合わせ:jada-education@playtruejapan.org
国内レベルアスリートにおける「クリーンアスリート」の観点と、「クリーンスポーツ」の関係性についての調査
本調査は、2021年版「世界アンチ・ドーピング規程」「教育に関する国際基準」に準拠したクリーンスポーツ教育プログラムの導入フェーズとして、国内レベルアスリート(JADA-RTPとJADAナショナルプールに登録されたアスリート)がどのように「クリーンスポーツ」「クリーンアスリート」をとらえているか、それらの観点を明らかにし、教育プログラムへの適用、推進~定着に向けて効果的な教材や教育アクティビティについて検討を行った。
国内エリートアスリートに対する教育推進におけるインフルエンサーに関する経年比較分析
本調査は、2015年度と2020年度に実施したエリートアスリートに対する「アンチ・ドーピング教育に関するインフルエンサー」のアンケート結果を比較し、パスウェイの各段階における、「アスリートとして」「人間として」のインフルエンサーについて経年変化があった者、無かった者を明らかにした。「アスリートとして」のインフルエンサーは、小学校~社会人まで『尊敬するスポーツ選手』『チームメイト』『クラブや所属チームの指導者』が共通しており、この傾向には経年変化は見られなかった。また、「人間として」のインフルエンサーは、『保護者』『尊敬するスポーツ選手』『チームメイト』『クラブや所属チームの指導者』がパスウェイの各段階において共通しており、この傾向に経年変化は見られなかった。特に「保護者」は、小学校、中学校段階での「人間として」の影響力が非常に高い特徴を持っていた。これらの結果をもとに、アスリートへの効果的な教育を実施するため、今後の連携機関の検討をすると共に、重点的な情報提供先の抽出を行った。
JADA-RTP/TPに対するパスウェイに沿ったインフルエンサーに関する調査
JADA-RTP/TPアスリートの各競技パスウェイにおけるインフルエンサーを明らかにすることで、インフルエンサーに対して教育を適切に行うと共に、インフルエンサーが適切に情報発信・啓発できるようになることを目指し、パスウェイに基づく効果的で効率的な教育の構築を目的として実施した。
特にエリートアスリートであるJADA-RTPは、国際総合競技大会への派遣、国際競技大会や国内競技大会への参加、居場所情報の提出など、様々な団体から教育を受ける機会が存在する。一貫して影響力を持つインフルエンサー、各パスウェイでの特異的なインフルエンサーを特定することによってパスウェイに即した教育が可能となること、さらに点として競技大会の機会を活用することで、より効果的な教育、情報提供の体制構築が可能となることが期待される。
国内医療従事者におけるアンチ・ドーピングに関する関心・知識、およびアンチ・ドーピング対応の調査
競技団体に所属する医療従事者(医師、看護師、薬剤師)と、一般医療機関に勤務する医療従事者間での、アンチ・ドーピングに関する関心・知識および、アンチ・ドーピング対応の経験(薬の問い合わせ、TUE申請、アスリートやサポートスタッフへの情報提供など)を調査、比較し、それぞれのターゲットに対して適切な情報提供について検討を行った。
日本・イギリスの2か国間におけるスポーツの”Fairness”と”Integrity”への一般市民の観点のアンチ・ドーピング政策への影響
この研究では、スポーツの価値に基づく教育プログラムの開発に貢献するため、そして世界アンチ・ドーピング規程を遵守するために、文化な価値の有意性を評価し、世界的なモラルの参照として、”Spirit of Sport”の有用性を調査した。日本とイギリスの2か国で一般市民の意識調査を基にしている。
日本・イギリス・シンガポールの3か国におけるスポーツの"Fairness"と"Integrity"に関する調査に基づく比較研究
これまでに実施してきたスポーツにおける"Fairness"と"Integrity"に関する調査(2015年:日本‐イギリス、2017年:日本‐シンガポール)を基に、日本、イギリス、シンガポール3か国間の比較分析を実施。ドーピングに関わる法整備の現状の分析も行い、罰則と教育、啓発、プロモーション活動等との関係性について分析を行った。エビデンスに基づくスポーツの価値を基盤とした教育への観点を提供した。
スポーツ・インテグリティとアンチ・ドーピングにおけるグローバルフレームワークとの関係性についての研究
この研究において、スポーツにおける「インテグリティ」と、ドーピング・八百長・虐待・ハラスメントといったスポーツの「汚職」に関して全体像をマッピング。これらの違法行為はスポーツの根幹にある価値や政府公的な資金を受けるための根拠を覆すこととなる。これらインテグリティに関わる全体像を整理することで、スポーツにおける「インテグリティ」を醸成する効果的な教育プログラムの構築に寄与することを目標としている。
大学生アスリートにおけるアンチ・ドーピングに関する意識調査
中央競技団体が管轄しているナショナルレベル等のトップ層に対するアンチ・ドーピング教育、啓発活動は、体系化されつつある一方で、大学生アスリートに対してはアンチ・ドーピング教育が行き届きにくいという実態がある。大学生アスリートに対するアンチ・ドーピング教育・啓発の機会、アンチ・ドーピングに関する意識を把握するために調査を実施。あわせて、近年サプリメントの使用によるアンチ・ドーピング規則違反が増加していることから、大学生アスリートのサプリメントの使用に関する実態調査実施。
日本・シンガポールの2か国間におけるスポーツの"Fairness"と"Integrity"に関する調査に基づく分析
日本とシンガポールにおけるスポーツの"Fairness"と"Integrity"に関する調査に基づき、日本人とシンガポール人がスポーツにおけるフェアネスに対して同様の価値を見出していることが整理された。スポーツにおける倫理観とアスリートにとっての平等な条件(equal conditions)に最も重きを置いていた。次に価値を置いていたのは、日本とシンガポールで異なり、他者との関係性を重要視する日本に比べ、シンガポールでは自分自身の信条を大切にする傾向がみられた。
トップアスリートに対するアンチ・ドーピングに関する意識調査
国内トップアスリートに対してアンチ・ドーピングに関する理解、意識・行動を把握するためにアンケート調査を実施。調査結果をもとに、トップアスリートのアンチ・ドーピングに関する理解・行動・知識を確認し、JADAの今後の活動の方針を検討するに当たっての参考とした。
アンチ・ドーピング関連規則と一般国民の観点:日本・イギリスの2か国間におけるスポーツの "Fairness" と "Integrity" に係る調査に基づく分析
本研究はスポーツの「フェアネス」と「インテグリティ」に係わる調査として、1) アンチ・ドーピングに関する規則、世論と人々の行動様式の変容との関係性についての分析、2) 既存の日本とイギリスにおけるドーピングとその他のスポーツにおけるアンフェアで非倫理的な行為に対する一般国民の意識についての比較研究を行った。
両国において、一般国民は普段の日常生活における自身の経験を基にスポーツにおけるアクションを捉え評価する傾向にある。
世界アンチ・ドーピング規程におけるユニバーサルな規則を基に、各国・文化のコンテキストに合わせたアンチ・ドーピング・プログラム構築が重要であることが再確認された。
イギリスの一般国民の「スポーツの価値」「フェア」に関する意識調査
2013年に実施した日本の一般国民 (4,000人)のスポーツの価値、フェア(アンフェア)、ドーピング等に関する意識等についてのWEBアンケート調査を、イギリスの一般国民 (4,092人)に同様に実施。
スポーツの価値を基盤とした授業の"ススメ"
平成25年度から高等学校における指導要領の体育理論にて、「オリンピック・ムーブメントとドーピング」が明記された。それにより、エリートアスリートを対象としたアンチ・ドーピングに関するルールを主とした「情報提供」ではなく、普段スポーツに携わる機会が少ない中高校生や、ユース世代を含め、スポーツの文化的な価値や、それを護るためのアンチ・ドーピング活動について学ぶ体制が整った。
これまでの調査研究にて整理された「スポーツの価値」や「フェア」に関する観点を整理し、それを基に現場にて活用できる指導案および事例集を取りまとめた。
スポーツと「フェア」およびスポーツにおける「インフルエンサー」に関するアンケート調査
エビデンスに基づく効率的・効果的な活動体制の整備を遂行すること、また価値に基づく「教育プログラム」の構築を目指して実施した。日本代表レベルのトップ層(シニア、ユース含)、また、大学に所属する国際大会や全国大会出場レベルであるアスリート、指導者ら、3,400名(アスリート325名、ユースアスリート168名、大学生2,848名、指導者32名、保護者27名)を 対象とし、アスリートが持つスポーツの価値(特にスポーツにおけるフェア)や各年代で影響を受けた人物、トップアスリートに望まれる人物像等について調査票を配付し、回答を回収して分析を行った。平成25年度には、同様の調査を一般の国民4,800名に対して実施したため、その分析結果を基に一般の人々とトップのアスリートとの比較を行うことによって、分析・考察を深めた。
「フェア」の概念に関する先行研究レビュー
本調査は、「フェア」の意識を形成する社会的背景、心理的背景に関連する国内の先行研究の文献検索を行い、それらを整理した上で、日本人のフェアに対する概念形成の変遷や考え方について体系化することを目的として実施した。そのことにより、別途調査研究として実施している、スポーツにおける「フェア」への意識・姿勢を今後分析する際の大枠を示唆することを狙いとしている
ガイドブック活用状況及び国体アウトリーチ調査
JADAが作成した「アンチ・ドーピングガイドブック“PLAY TRUE”」(以下、ガイドブック)の配布状況及び配布における課題を抽出するために、都道府県体育協会を対象としたアンケート調査及びヒアリング調査を実施した。また、国体でのアウトリーチプログラム参加者を対象として、ガイドブックの認知度、アンチ・ドーピングの理解度に関するアンケート調査を実施した。
ガイドブックのエンドユーザーであるアスリートへの普及状況、アンチ・ドーピング活動への積極的な関与などについての課題が明らかになり、研修会教育キットの効果的な活用、指導者・サポートスタッフの介入、各種連携などの今後の取組の方向性を整理した。
一般国民の「スポーツの価値」「フェア」に関する意識調査
一般の国民のスポーツの価値、フェア(アンフェア)、ドーピング等に関する意識等を把握し、今後の教育・啓発活動、情報発信の参考にすることを目的として、一般の国民を対象としたWEBアンケート調査を実施した。
一般の国民の意識として、「ドーピング」=「アンフェア」のイメージが定着していること、フェア/アンフェアは平等な条件、スポーツの規範、人としての規範の3軸で判断されること、アンチ・ドーピングがフェアを多面的に具体化したものであることなどが明らかとなり、「フェア」と「アンチ・ドーピング」による教育・啓発活動及び情報発信に関する今後の取組の方向性を整理した
大学生アスリートのサプリメントの使用実態に関する調査
近年のアンチ・ドーピング規則違反が、サプリメントに含まれる禁止物質を無意識に摂取してしまう事例が多いことを踏まえ、日常生活やトレーニング時の管理体制についても、高校生までと比較して自由度、自主性が増す大学生アスリートを対象に、サプリメントに対する意識等に関してアンケート調査を実施した。
特定のサプリメントに偏った使用実態や低頻度でサプリメントを使用するアスリートが、リスクの高い状況にあることなどが明らかとなった。
RESARCH
03
研究結果を活用、学術分野とのコラボレーション
未来のリーダー育成のための包括的なスポーツに対する視座を養い、スポーツの価値の教育活動の重層化
筑波大学/ つくば国際アカデミー
Tsukuba International Academy for Sport Studies (TIAS)
●“Anti-Doping and Integrity of Sport” のモジュール (10授業: 毎90分) 開発、授業実践
対象:スポーツマネージメントの修士課程の学生 (MA in Sport and Olympic Studies) 内容:WADAの “The University Anti-Doping Textbook”を参照、「リアルチャンピオン教育パッケージ」のマテリアルを活用 ・行動変容の「フェーズ」を基盤とした、学習目標を明示化 ・アンチ・ドーピングの概念的な理解、インテグリティやアンチ・ドーピングに係る事例等を用いた、グループディスカッション ・スポーツの価値を体感・体現するNew MO!等を通したアクティブラーニング等 *筑波大学とJADAは、包括的連携・協力協定を2013年11月に締結
鹿屋体育大学国際スポーツアカデミー
National Institute of Fitness and Sports Academy (NIFISA)
●“Anti-Doping”セッション (120分) 授業実践
対象:スポーツイベントの運営を中心とするスポーツマネジメントコースと、競技パフォーマンスの向上につながる医科学サポートや実践知の研究を促進するスポーツパフォーマンスコースに参加するアジア地域の若手コーチや研究者 内容:短時間で国際スポーツへの視座・視野の提供 ・アンチ・ドーピングの概要、ルール ・ケーススタディ~ディスカッション ・スポーツの価値を体験するNew MO!を実践、メッセージ構築 ・New MO!ルール:マンガムービー